小林泰三の「脳髄工場」を読了。
”2015年2月11日”

越石です。

小林泰三の「脳髄工場」を読了しました。
以下、所感です。ネタバレ注意です。

脳髄工場

近未来、多くの人が脳髄に機械を埋め込み、感情なんかを制御する世界。主人公は人工脳髄に制御された人間に自由意思はあるのか葛藤し、装着を拒否し続ける少年。
人工脳髄に関係なく未来は決定されており、自由意思などないというオチなのだがよくわからなかった。未来を見たなら尚更自由意思で未来を変えられそうなものだが、結果、未来を見ても変えられないというのが恐怖なのだろうか。

人工脳髄を入れる手術は痛そう。しかも脳という人体で一番デリケートと思われる場所なのに専門の医者ではなく、街の理容師兼脳髄士が施術するという設定がエグさを強調してた。中世かよ。

脳の異常(特殊性)の例示として、「太陽を赤ではなく黄色に塗る幼児」とあったが、自分は小さい頃から太陽を赤に塗る奴の目はイかれてるんじゃないかと個人的に思ってました。お前らにはアレが赤に見えるのかと小一時間問いたかった。問い詰めたかった。ちなみに小学生の頃から私は白に少し黄色を足した色で塗ってた。というか太陽を太陽として描くことはほとんどなかったように思う。

友達

母に必要以上に厳しく育てられ、失敗を恐れるあまり、無口で地味な性格に育っていった少年。そんな少年はやがてイジメの対象となり、やがて自分の中に理想の自分を作り会話までするようになる。そして理想の自分は自分の意思をもったかのように振る舞い、憧れの彼女と付き合う…予想外の結末。

停留所まで

これは短いお話。まぁホラーか。子供達が都市伝説の話をしている。よくあるオチ。

同窓会

これも短いお話。よくあるホラー話。

影の国

これは世にも奇妙な物語的な感じ。

これも短い話だが面白かった。未来の自分から電話がかかって来て、言う通りにすることでうまく行く。しかし実はかけてきた自分は失敗した自分。そして…。
SF的なタイムパラドックスの要素やロジックは特にないが、なかなか面白かった。

C市

世界各国で頻繁して起こる怪奇現象。その対策のために日本に集められた世界中の科学者達。CはCthulhu(クトゥルフ)のC。
そこで複数の科学者グループがそれぞれ独自の解釈でクトゥルフの存在について議論するとこら辺が面白い。宇宙生物派、異次元知性体派、究極観測者派、人間原理や量子力学など絡めての解釈はそれ一つ一つが掘り下げたらSF小説になりそう。
そんな中、一つの科学者グループが、クトゥルフの撃退用に自己進化する人口生命体を作り上げる。この生命体がグロテスク。機械と生物がグチャグチャ混じったやつっぽい。頭の中では映画アキラで鉄男の機械の腕が暴走するやつを思い浮かべました。機械と肉の融合的なやつ。
オチは予想通りだがなかなか面白かった。
しかし、途中唐突に出てくる「塩の秘術」や「呪文」はなんだったのか?あまりに唐突過ぎて、一旦最初から流し読みし直したよ。呪文の「ようぐそうとほうとふ」は玩具修理者に出てくる名前で、由来はクトゥルフ神話に登場する旧支配者「Yog-Sothoth(ヨグ=ソトホース)。玩具修理者を読んだばかりなのでニヤリです。

アルデバランから来た男

探偵事務所で依頼者を待つ超能力を持った2人の探偵。依頼者は唐突にアルデバラン星からきた異星人だと言う。アルデバランは科学は非常に発達したが人口が増え過ぎて問題になっている。そこで政府は人間のバックアップ(コピー)を実施し仮想現実に送り、現実(元)の人間を消していっているという…そしてそんなアルデバランから反政府の協力で逃げてきた依頼者…。
これはオチ読めなかった。面白い。

綺麗な子

技術が進歩した未来、犬型のペットロボットは本物と見分けがつかず、子供型のロボットも本物と見分けがつかない。男は所詮玩具に心はないと頑なに思う。男の妻は本物の犬や子供は糞をするから嫌と、自分の子供まで殺してしまう(法律が変わり7歳までは中絶が可能だと…)。そんな世界ではやがて誰も子供を作らなくなり、若者が消え、老人と子供型のロボットが生活する世界…。
すごく切ない。生物に対しても、ロボットに対しても切ない。なぜか涙が出そうになった。

写真

心霊写真を写真の専門家として科学的に鑑定をする男の元に、鑑定中の写真に写る少女が訪ねてくる。短い怪談。

タルトはいかが

姉の元に届く弟からの手紙。そこには血の入ったお菓子を彼女と一緒に食べる様子が。そして手紙の内容はどんどんおかしな方向に進み、血を食べないと死んでしまうという。吸血鬼のお話なのかと思ったらそうでもないし、オチはよくわからなかった。

そんな感じで全11編の短編集。

後半の「C市」「アルデバランから来た」「綺麗な子」がSF的で特に良かった。その他はホラーや世にも奇妙な物語的な話。角川ホラーだから当たり前か。

脳髄工場 (角川ホラー文庫)

新品価格
¥637から
(2015/2/12 09:55時点)

関連記事

メールアドレスが公開されることはありません。