小林泰三の「海を見る人」を読了(ネタバレあり)
”2015年1月19日”

越石です。

そういうわけで、小林泰三の「海を見る人」を読了しました。

私の悪い癖で、一度ハマると熱が冷めるまで徹底して集めてしまいます。(とはいえ限りあるお小遣いの中なので大したことはないですが)すでに大型書店、古本屋を巡回し、「百舌鳥魔先生のアトリエ」と「脳髄工場」を購入済です。

さて「海を見る人」ですが、多少ネタバレありで感想を。

 

時計の中のレンズ

よく分かりませんでした。
まず、世界の形が分からない。後半まで読み進み、もしかすると砂時計のガラスの形か?と思った直後に砂時計の形だと説明が。しかし結局オチも分からず…。

独裁者の掟

大きな叙述トリックがありました。まったく気づかなかった。お話としてはう〜ん。

天国と地獄

重力が逆さまの世界。地面にぶら下がって生きている人々の話。世界観は面白い。逆さまである事が当然として生きている人々の感覚が面白い。おそらく地球の未来なのだろうが、本書では謎は残ったまま。どうやらリングワールドを想像すると良いらしい。だとすると内側に人が住むための世界で、それを知らずにその外側で振り落とされないよう必死にしがみついて住んでる人って・・・。
同名の長編小説で謎は解けるのだろうか。また買わねば…。

キャッシュ

これはSF。ハードSF。
数百年はかかる恒星間移動に伴う人の長い冬眠は記憶に問題が起きる事が分かったため、解決策としてコンピューターで仮想現実の世界を作り、脳の状態を最適に保つというもの。その仮想現実の世界で起こる事件のお話。中々良かった。

母と子と渦を旋る冒険

物語に登場する主人公の純一郎くんは、自らを人間だと言ってますが、確かに地球の文化などの知識はあるものの、所謂人間ではなく、恒星間飛行が可能な有機マシンのようです。
母体から発射され、宇宙のデータ集めが目的のようですが、そこで別の生物とのファーストコンタクトが少しグロい。コミュニケーション方法の違いから、結果的には相手の生物を無残に殺して食べてしまっただけです。純一郎くんに全く悪気はありません。むしろ死んでしまったことを申し訳なく思ってます。面白い。そして純一郎くんも母親にひとつの情報として食べられ、さらにクズ情報として消去されてしまうのですが…。

海を見る人

若者同士の淡い恋物語。しかしそこはSF短編。女の子が浜の村で3、4日程度生活するだけで、男の子の山の村では1年くらい経ってしまうのです。高い場所ほど時間の進む速さが遅くなる世界。そういう世界。(後書きによるとブラックホール付近ではそういう事があるらしい)
そして女の子は事故で海の狭間に落ちてしまいます。周りからは女の子は狭間に近づけば近づくほどゆっくり時間が流れます。女の子にとっては一瞬ですが。そう、まさにブラックホールに落ちた時と同じようです。ブラックホールでは本人には一瞬でも、周りからは中心に近づけば近づくほどゆっくり見えるそうです。なかなか切ないお話でした。

量子テレポートが発達した未来、タイムトンネル的な事象が可能な「門」が発見され、危険だという事でそれを破壊しようとする話。中々面白かった。オチも良かった。本短編で一番かも。
量子テレポートについては、ネットで見た「どこでもドア」の思考実験で、転送前の人間はドロドロに溶かされてしまうという話を思い出し、そればかりが気になった。
※参考リンク→どこでもドア – 哲学的な何か、あと科学とか

総評

全体的な印象として世界観が複雑で正直あまり(ほとんど)理解できなかった。どうやら著者本人の後書きを読むと電卓片手に世界を計算しているらしい。そして読者も電卓片手に検算出来るらしい。
もちろん私は無類のハードSF好きなので電卓片手に計算などしないのです。ただ一見説得力のある不思議なお話を楽しむだけです。

ちなみに意外にも多くのお話がラブストーリーでした。

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